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真鍋先生にきく 第1回|子どもとみる特別展「恐竜博2023」のみどころ

2023年3月14日(火)~6月18日(日)上野の国立科学博物館(以下、科博)にて特別展「恐竜博2023」が開催されます。

これは数年おきに科博が主催するもので、前回の特別展「恐竜博2019」では記録的な68万人を動員。

50年以上の時を経て全貌が判明した「デイノケイルス」や、北海道から全身化石が発見され、新種と認定を受けた「むかわ竜」が展示され、連日長蛇の列ができました。

今回の特別展「恐竜博2023」のポスターの表題は、「今度の主役は『トゲトゲ』だ!」ー。

  • 今回の特別展の主役にこの「トゲトゲ」が選ばれたわけは?
  • 開催2か月前の現在は、どんな準備が行われているのでしょうか?

今回、国立科学博物館 副館長であり、特別展「恐竜博2023」監修者である真鍋真先生へのインタビューが実現し、開催2か月前の科博へお邪魔してきました。

その内容を、これから全3回に分けてお送りします。

>特別展「恐竜博2023」のプレスリリース情報はコチラから

目次

真鍋先生に聞く|子どもと行く特別展「恐竜博2023」のみどころ

真鍋真先生

探究舎

「今回はまず、特別展『恐竜博2023』について、真鍋先生が『ぜひ見てもらいたいポイント』を、

  • 初めて恐竜博に来る親御さんやお子さん、
  • もしくは恐竜にちょっと興味が出てきたぐらいのお子さん

に向けて、教えてください。」

恐竜図鑑から抜け出たような、貴重な化石「ズール」

メインビジュアル

真鍋先生

「はい、わかりました。

ー今回は、ポスターやチラシなんかでも、『トゲトゲ』っていうことで、『鎧竜』。

いわゆるアンキロサウルスに代表される恐竜たちに、初めてフォーカスした特別展です。

アンキロサウルスや鎧竜って有名な恐竜たちですし、実は僕もこの準備をしていて、この4年ぐらいで初めて知ってびっくりしたんですけど。

鎧竜って、鎧で体を守られてるから、化石になりやすそうな気がするじゃないですか?」

探究舎「ええ、思います」

真鍋先生「だけど、頭から尻尾の棍棒まで繋がって見つかってる化石って、とても珍しいんです。実際には棍棒だけ外れちゃうとか、頭だけ外れちゃうとかっていうケースばかりなんですね。

ロイヤルオンタリオ博物館外観
©Royal Ontario Museu

それで今回目玉としてご紹介する『ズール』っていうのが、(今トロントにある、カナダのロイヤルオンタリオ博物館からお借りするんですが)全身が繋がって見つかってる貴重なもので、この化石が現時点ではほぼ『唯一』と言われてるものなんですね。

私も拝見して、これだけいい化石なんで、これをやっぱり、日本の皆さんに、一緒に見てもらいたいなと思って。これが1つ、『ズール』というのがまず皆さんに見て頂きたい1番のポイントですね。」

怖がりなお子さんにも、安心して眺めてもらえると思います(笑)

真鍋先生

「親御さんですとご経験あるかもしれないんですが、小さいお子さんて、図鑑や絵本なんかで普段恐竜を見ていても、いざ博物館や恐竜博とかに来ると、みんな骨になってしまってて(笑)。『怖い~』って泣き出しちゃうようなお子さんもいらっしゃるんですよね。」

でもこれが、ズールに関してはー

真鍋先生

「骨を組み立てた部分は骨なんですけど、体の表面の骨になった鱗の部分っていうのが綺麗に繋がって見えて、『トゲトゲだ』っていう写真がまさにね、そういう体の表面の部分が映っていますよね。死んでしまってるんですけど、まさにあのまま。

『図鑑とかに出ているあのままが化石になってる』っていう、すごい標本なんですね。

ですのでお子さんたちにあれを見ていただいて、図鑑とか、絵本だとかと見比べて見てもらえると、『骨みたいで怖いよ』とか(笑)、そういうようなことがちょっとでも払拭されればいいなと思ってます。

ー「でもね、実はズールに行く前に、いろんな他の恐竜たちをお見せすることにもなってるので、もうそこで骨いっぱい見ちゃってるから、怖くなった子はもうここに来る前に怖くなっちゃってると思うので、取り返しはつかないんですけど。(笑)」

探究舎「あはは(笑)」

真鍋先生

「ズールのところに来たら、『そういう体のまま、図鑑に書いてある体のまま化石になって残っているっていうこともあるんだよ』っていうことを、ぜひ見ていただきたいと思いますね。」

ズールと戦っていた「ゴルゴサウルス」もやってきます

ズール(左)とゴルゴサウルスの対峙シーン ©Royal Ontario Museum photographed by Paul Eekhof

真鍋先生

「ズールの正式名称『ズール・クルリヴァスタトル』というのは、『クルリ』はすね、『ヴァスタトル』は破壊者という意味です。今回の展示では、尾の先につく推定7キログラムのこん棒で、獰猛なゴルゴサウルスのすねを攻撃するシーンを全身復元骨格で再現します。

ズールなどの装盾類は、究極の防御のためにトゲや鎧を進化させましたし、

ゴルゴサウルスやティラノサウルスなどの肉食恐竜は、大型化などによってその進化に対抗しました。今回は、恐竜のたちの『攻め』や『守り』という視点も1つのテーマになっています。」

あの新種の肉食恐竜「マイプ」が日本初上陸

マイプ・マクロソラックス発掘現場(2020 年)
photographed by Matias Motta, 202

真鍋先生

「それから、もう1つは『マイプ』っていう、アルゼンチンで私たちが発見して、2022年に命名した新種の肉食恐竜があるのですが。全身がまだ見つかってないので、全身組み立て骨格にはなってないんですけども。北半球のティラノサウルスに対して、南半球ではメガラプトル類が白亜紀最末期の食物連鎖の頂点にいたらしいことがわかりました。」

探究舎

「先生の新しいご本で拝見しました!」※

※参考「君も恐竜博士だ!真鍋先生の恐竜教室」岩波書店| 真鍋先生は2023年3月アルゼンチン南部のパタゴニア地方へ発掘隊として参加。この時発掘された化石が、全長9mと推定される大型獣脚類のものと判明し、頚椎などの特徴からメガラプトル類に分類された。そして、鳥口骨や脊椎骨にこれまでのメガラプトル類とは異なる特徴がみられることから、マイプ・マクロソラックスと名づけられました。(マイプはパタゴニア地方の伝説に出てくる「風の死神」、マクロは「大きな」ソラックスは「胴体」の意味/胴体の横幅が90センチくらいと非常にがっしりとした体つきの肉食恐竜とわかったため。)

真鍋先生

「はい。まだ実物化石が展示できるかわからないのですが、レプリカは完成したので、マイプにも会いに来て下さいね。」

恐竜から鳥へ。ドードーと「第6の大量絶滅」を考える

真鍋先生

「恐竜博の最後には、『ドードー』の骨格をご紹介します。

『人間が絶滅させてしまった』といわれている鳥ですね。ーいま、ドードーだけでなく、今いろんなところにいる鳥たちが絶滅危惧種になってしまったりしてるじゃないですか。せっかく6600万年前の恐竜の時代の絶滅を生き残ったのに。」

探究舎「はい。」

真鍋先生「恐竜の子孫として生き長らえてきたそういう鳥たちも、人間の活動によって『第6の大量絶滅』なんて言われています。その鳥たちのためにも、『恐竜が好きなあなたなら、6600万年前の恐竜に何が起こったかって知ってるあなただったら。今の鳥たちに対しても、もっと親しみや関心を持って見てあげられるんじゃないでしょうか?』って思うんです。

『恐竜のことを知っているみんなだったら、鳥たちのために何ができるかな?って。そんな思いを持ってもらえたら』っていうところが、最後にテイクホームメッセージのひとつです。」

お子さん連れの親御さんに向けて

科博の常設展示で見られるスコロサウルス。首回りは発達した板状の骨と、背中が多くの皮骨で囲まれ、まるで全身武装してるかのようなのが鎧竜の特徴です。

探究舎

「探究舎を見に来てくださるファミリー層には、私を含め、子供が先に恐竜に興味を持って『こういう面白い世界があるんだって大人になって知りました。』っていう親御さんも多いんです。

『子供と一緒に恐竜博2023に行くのに、ちょっと予習しておきたい』親御さんに、おすすめの準備というか、そういったものはありますか?」

真鍋先生

「今はいろんなものがあるので、どれを読んでいただいてもいいと思います。恐竜博の会場はいつもなかなか混んでいるので、急いでると、もしかしたら難しいかもしれないんですが。図鑑でも絵本でも、お子さんが好きで、いつも一緒に読んでるものがあったりするじゃないですか。」

ーはい

「鎧竜が出てくる絵本でも、図鑑でも、『この子の特徴は…』とか、そういうのが出てるじゃないですか。それから、『この子はそういう行動をして、肉食恐竜に対決した』みたいなことが出てると思うんで、それを一緒に、実際に持って行って。骨格と比較してみたりするとか、もしくは違う恐竜と実際に比較してみるとか。

 それから、会場には先ほどのズールと、ゴルゴサウルスが戦っていて、脛を叩かれてるような状況で復元したものもあるんですけど。そういうところに自分の好きな絵本とかを持って行って、目の前のシーンを自分の言葉で会話してもらうと、ますますその絵本や、図鑑が、そして博物館が好きになるんじゃないかなと思いますね。

やっぱり色々な保護者の方がいらっしゃるので、どのぐらい予備知識があるかとかでも違ってくると思うんですけども、自分が大人として、説明を聞いた時に腑に落ちるー『あ、そうだったのか、面白いな』って、思えるようなことがあると、お子さんとお話するのも、一緒に恐竜博で過ごす時間も楽しくなると思います。

 何か、お子さんといつも会話していて出てくる恐竜であるとか、絵本であるとかそういうもので、『今度恐竜博行ったらこれを見てみよう』とか、『これと比べてみよう』とか、そういうような予習をしていただくと、実際に来場していただいた時、もっともっと発見することが増えてくるんじゃないかと思うんですよ。」

真鍋先生からの、特別展「恐竜博2023」で是非みてほしいポイントまとめ

  1. 「鎧竜がここまで綺麗に残っている貴重な標本だ」というのを、ぜひズールの実物で見てほしい。
  2. もし肉食恐竜が好きだったら、マイプ、メガラプトルをカルノタウルスやティラノサウルスと比べてみてください。
  3. それから、恐竜を通して「今の鳥たちに親子でもっと親しんで考えてみてほしい」と思います。恐竜博の後にはぜひ、親子で鳥を観に、動物園や水族館、植物園にも足を運んで、親子で自然を考えてもらえたらなと思います。

▶特別展「恐竜博2023」のチケットを確認する◀

編集後記

昨年10月、緊張しながら初めて国立科学博物館へ特別展「恐竜博2023」の取材を申し込みました。

まさか個人メディアの取材に、あの真鍋先生がご対応頂けるとは思わず。飛び上がりたい反面、当日朝まで吐きそうなくらい緊張しました(笑)。

でも、実際お会いした真鍋先生は「研究者=気難しい?」というようなイメージとは違い、気さくでユーモアのある、とてもお話しやすい先生でした。

化石や標本の貸し借り等の交渉ごとを一手に引き受けられているというのも、真鍋先生のこういったお人柄によってできた関係性や、コミュニケーション力が成せる技のようにお見受けしました。

ゆったりと椅子にお掛けになり、(当たり前なのかもしれませんが)手元の資料などはなにもご覧にならず、こちらの質問になんでもわかりやすくお答えくださり。

マイプが発掘されたアルゼンチンでのキャンプの夜のお話など、つい引き込まれてしまう、あっという間の1時間でした。

(こちらは第2回以降をお楽しみに。)

真鍋先生の書籍のご紹介

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