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真鍋先生にきく 第2回|最新恐竜情報が満載!特別展「恐竜博2023」の楽しみ方ガイド

2023年3月14日(火)~6月18日(日)上野の国立科学博物館(以下、科博)にて特別展「恐竜博2023」が開催されます。

1月初旬。国立科学博物館 副館長であり、特別展「恐竜博2023」監修者である真鍋真先生へのインタビューが実現し、開催2か月前の科博へお邪魔してきました。

その内容を、全3回に分けてお送りしています。

(前回)第1回 子どもとみる特別展「恐竜博2023」のみどころ

第2回は、前回の続きで今度は「恐竜に詳しいお子さん~大人の方」に向けて、特別展「恐竜博2023」を楽しむポイントや、化石発掘についてインタビュアーからの質問にお答え頂きました。

目次

特別展「恐竜博2023」で見逃せない!トゲトゲからわかったズールの生態の最新情報。

探究舎

「では先生、ここまでは、初めて恐竜博へ足を運ぶお子さんや親御さん向けに説明をお願いしました。ここからは、恐竜にはちょっと詳しいお子さんや、大人の方に向けても、恐竜博2023の楽しみ方やみどころをお話頂けるでしょうか。」

ズール・クルリヴァスタトルの背中部分(実物化石)©Royal Ontario Museum photographed by Paul Eekhoff

真鍋先生

「わかりました。

まず、ズールは本当に状態がいい化石なので、鎧のトゲの、あのピーンと尖った先端が綺麗に残っている様子をぜひ見ていただきたいです。ちょっと恐竜に詳しい方に向けてとすれば、ちょうど去年12月の終わりの方に、ズールに関して新しい論文が出ました。

真鍋先生

「ズールの尻尾にあるこん棒は振り回すと、ゴルゴサウルスのような肉食恐竜の、ちょうどすねに当たるので、ズールの名前にはズール・クルリヴァスタトル(クルリヴァスタトル=すねを破壊する者)っていう意味がついています。しかし実はこの棍棒が、仲間内でのライバル争いにも使用され、仲間の脇腹などに打撃を与えた可能性があることがわかりました。」

探究舎

「なるほど、高さ的には他の恐竜というよりは、同じ種同士を攻撃しあう高さに合っている感じですもんね。」

真鍋先生

「そうなんです。可能性としては皆が考えていたと思うんですが、実際にズールの、ちょうどこの位置に、鎧の先端が折れている箇所があるしかもそれが死後折れたのではなく、治りかかっている。ということは、生きている時に、そうやってぶつかり合うことがあったんじゃないか、というのがこの論文の内容です。

ズールの実物展示では、とくに小さいお子さん方に、このトゲトゲの部分や、折れた先端を近くで見て頂きたいと思い、腹ばいになって、近くからこの脇腹を見られるようなステージを作りたいと思っているんですよ。」

新種の肉食恐竜「マイプ」今回は中間報告です、続きもお楽しみに。

マイプ・マクロソラックス発掘現場(2020年) photographed by Matias Motta, 2020

探究舎

今回、マイプの実物化石が展示されることが決まりました。全部で11個ということですが、どのような部位で、どんな展示になる予定なのでしょうか」

真鍋先生

「はい、化石は背骨が8個、肋骨が2本、烏口骨が1個で、背骨は首や背中、尻尾の部位ですね。

展示については、皆さんから『レプリカで全身復元骨格を作って、全身こんな恐竜ですよ。とお見せした方がいいんじゃないか』っていう風に言われるのですが。

(コロナ感染拡大の影響で、真鍋先生を含む発掘隊は発掘作業の途中で帰らざるをえなかったので)やっぱりもっと、歯や頭や手や足なんかをちゃんと発見して、それから全身復元骨格を作らないとと思うんです。

今の材料だけでは、大体の大きさや形状は推定できても、メガラプトル類の特徴の前あしのカギツメなどはまだ見つかっていません。

この恐竜を紹介する、きちんとしたお披露目をするには、もっと広く発掘をして、より詳細な情報が必要だと感じています。早く、もっと化石を見つけて、『全身がこういう恐竜でした』っていうのを、お伝えするような場面を作りたいですね。

今回の展示では、『バラバラの骨なんですけど、こういうものが見つかって、こういう恐竜だと推定されています。』っていうところまでです。僕自身としては「続く…」みたいな中間報告ですけれど、今回は実物化石が来ますから、ぜひ皆さんに見ていただきたいなという風に思います。(笑顔)」

恐竜の化石発掘現場からー新種ってどうしてわかるの?ー

イメージ画像 ※本文とは直接関係ありません

探究舎

「先生にお聞きしてみたかったのですが、化石を発見した時に『これは今までに発見されたものとは違うな』とか、『これは何々類のものではないか』といった判断はどのようにしていくのでしょうか? 先生たちの頭の中には、既に様々な恐竜の、上腕骨のかたちとか、そういったデータベースが、全部入ってらっしゃるってことなんですか?」

真鍋先生

「そうですね。恐竜の種類や、骨の特徴については、教科書や博物館などで勉強したものがベースになっていて、自分が発見した化石と照らし合わせたり、比較しながら特定していきます。

発掘した化石を見た時に、頭の中で『ティラノサウルスだったらこうだよね』『アロサウルスだったらこうだよね』とか『デイノニクスだったら、こうだよね』と当てはめていって。それがぴったり合えば、『あ、そっち系統かな。』合わなかったら『違うものかもしれない』っていう風にしていって。基本的には、論文をとにかく調べていきます。

※イメージ画像

今は便利な時代で、屋外にいても、キャンプ生活をやっていても、論文はPDFとかで持って歩けるじゃないですか。そうすると、夜キャンプに戻ってきたら色々文献を検索して、「あ、これに近いかな。」「あれに近いかな」とやり始めるんですね。

だから、今回のキャンプ中でも(※真鍋先生は2023年3月アルゼンチン南部のパタゴニア地方へ発掘隊として参加。この時発掘された化石が、全長9mと推定される大型獣脚類のものと判明し、頚椎などの特徴からメガラプトル類に分類された。そして、鳥口骨や脊椎骨にこれまでのメガラプトル類とは異なる特徴がみられることから、マイプ・マクロソラックスと名づけられました。)、

発掘作業のあとは、みんな疲れて帰ってくるんだけど、晩御飯はそこからまたみんなで作るっていうようなことをやっていて。でも大変じゃないですか。(僕は『効率が悪いかな』って思うから、個人的には『コックさんを連れていけたらいいのにな』なんて思うんですけど。費用がかかりますからね。)

そうすると、ご飯が夜の10時半とか、11時になんないと出てこないんですよ。

そうすると、みんなでポリポリと、ポテトチップスとかピーナッツとか、ああいうものを食べながら話をしたり、一杯やったりするんですけど。

その時間に、ちょっとスナック食べながら、お茶やビール飲みながら、「じゃあ今日見つけたやつを、持ってきた顕微鏡でみてみようか」とか「このスジって今までのやつにないね、スジのあるやつなんかなかったよ」とか、「ここのとこに穴があいているの知ってる?」みたいな感じのことをみんなで話しながら、例えば「これって、今までに見つかってないんじゃないか?」みたいな感じで。

そうしたら、もうそのままパソコンで原稿書き始めて、大学に見せたりして。それが楽しかったですね。うん。」

探究舎

「へぇー!すごい!」

※イメージ画像

真鍋先生

「だから、今までに論文とか、教科書や図鑑で知っている形のものを、頭の中に記憶していたり、何かを参照して比べてっていうようなところがまずあります。

わたしもですが、大学院での勉強においては、最初に人間の骨を徹底的に勉強することで、骨格に関する基礎知識を身につけました。人間が最もよく研究されている脊椎動物なので、性別や年齢による違いも知られていますからね。

同様に、恐竜の研究においては、現在生きている鳥やワニ、トカゲなどの動物と比較しながら、体の部位や歯の形などを見比べることが基本的な手法です。

でもそれだけでけでなく、化石の特徴を理解するためには、多くの知識と経験も必要です。

ちょうどこの間、別の取材で、「1番嬉しかったことはなんですか?」という質問をされました。

たくさんあるんですけど、その時にふと思い出してお話したのが、アメリカの大学院生時代に初めて野外に行き、白亜紀最末期の地層を調べていた時のことです。

わたしがなにかの『背骨の化石』を見つけたんですね。その時のわたしは、それまで持っていた基礎知識で『これは何かの背骨、尻尾だ』っていうところまではわかりました。

それで、それをキャンプに持って帰って『こんなのを見つけた』と言ったら、『それエドモントサウルスだよね』って言う先輩がいた。『え、なんでわかるの?』と聞いたら『論文見て比べてごらんよ』と言われて。

それでさっきの通り、ティラノサウルスのを、エドモントサウルスのを、トリケラトプスのを見比べていった時に、『この目の前にある化石はエドモントサウルスのに、1番近いよね』っていうことまではわかるんです。

そうしたら、その先輩が「リンゴの断面を切ったような形になんとなく似てるから、自分はリンゴの形って覚えてるよ」と教えてくれて。それで僕も、「あ、それはなかなかいいな」と思って。

そんなことは別にネットには書いてはないですよね。あるかもしれないけど、教科書には絶対書いてないじゃないですか。

だけど、それ以来、こういうリンゴっぽい形をしていれば、こういう鳥脚類の尻尾の骨なんだっていうのがわかるようになった。

そうすると、また次に行って別の化石を見た時に、また先ほどのように比較して、『どれに近いかな?』みたいなことをやるんですが、その時に『これはりんごじゃないよな』『これ形容するとしたら何かな?』みたいなことを考えたりするようになるんですね。

そういうふうに、知識だけでなく、様々な経験も経て、『わかる』『わかるようになる』ってことは楽しいですね。

真鍋先生の書籍のご紹介

沢山の書籍を書かれ、監修されている真鍋先生ですが、とくに特別展「恐竜博2023」前に読んでおくのにおススメの書籍をご紹介します。

▶特別展「恐竜博2023」のチケットを確認する◀

小学生くらいのお子さんから読めます。恐竜博2023でもレプリカ展示が決まっている(真鍋先生がアルゼンチンでの発掘隊で発掘された)新種の肉食恐竜「マイプ」については、こちらに書かれています。

「恐竜博2019」の際、舞台裏で活躍された様々な職種の方々にスポットを当てて紹介されています。骨格標本を作る人、恐竜博の舞台を作る人、PRをする人…など、「こんな職業があったのか」と大変興味深かったです。

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